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2010年11月12日

加熱講座6 遠赤外線の真相

放射で熱を伝える赤外線にも種類があります。 よく耳にするのが、遠赤外線でしょう。 「遠赤外線で美味しくなります」との宣伝文句で調理機器が販売されています。 ここで、遠赤外線について整理してみます。 まず、赤外線ですが、これは電磁波の一種です。 電磁波はその波長の長さによって、区別されています。 目で見える可視光線を基準にしますと、可視光線より波長の短いものが紫外線であり、長いものが赤外線となります。 太陽の光は、この3つを帯びた光でもあり、紫外線と赤外線は見えないので、不可視光線と呼ばれます。

可視光線は、色が見分けにくいですが、プリズムや雨滴に通して屈折などをさせると、スペクトルや虹として表れます。 わが国の文化や慣習では、紫から赤までの七色に分別されます。 この色合いは、波長の違いから生じるのですが、通常は混ざり合っているため分別しにくく、白に近い色として認識されます。 ところが、波長の違いによって、それぞれ固有の屈折率があるために、屈折・反射などをさせると整然と並ぶのです。 波長の短い紫から始まり、波長の長い赤に至ります。 その意味では、赤外線とは、可視光線の赤の部分と隣り合わせになります。 赤外線の名前の由来も、そこから来るのでしょう。紫外線も同じで、可視光線の紫の部分と隣り合わせとなります。


セラミック加工のフライパンは、遠赤外線を放射しています。

さて、赤外線も、可視光線と同じように、波長の幅があります。 赤外線の中で、波長の短いものを近赤外線、長いものを遠赤外線と分けて呼んでいます。 遠赤外線とは、波長の長い赤外線と言えます。 ちなみに、赤外線より波長のさらに長いものが、電子レンジのマイクロ波という位置付けになります。 さて、ここで誤解をされるのが、「遠赤外線は食材の内部に浸透する」という点です。 食材の内部に浸透するのは、あくまで電子レンジのマイクロ波です。 遠赤外線は、内部には浸透せず、表面で吸収されて熱に変わり、その熱が内部に伝導して行きます。 遠赤外線の周波数が、食材などの分子を振動させるのに適していると言われています。 この吸収が良好であるために、内部に浸透しているかのような錯覚が起るのかもしれません。

ですから、遠赤外線の暖房器具でも、「体の中から温める」と言うよりも「体の中まで温める」という表現の方がより正確だと思います。 なお、近赤外線の方は、数ミリ程度内部まで浸透して熱に変わりますが、大きな違いはないでしょう。 また、遠赤外線は、表面のみに集中して熱を加えられるとも言えますので、食材の表面を効率よく加熱できる。 良い焦げ目を付ける点では適しているでしょう。 食材の表面温度が早く高くなり、表面の水分が蒸発するので、焦げ目が早く付き、表面がカラッと乾燥した仕上がりになります。 かえって、内部に熱が入ってしまうと、パンなどは固くなってしまうこともあるでしょう。 ハンバーグなどでも、ほんのりと水分が残ったジューシーな仕上がりが理想です。 ただ、内部に熱が入るのに時間がかかると、表面が良い焦げを越えて、黒焦げになる危険性があります。 フライパン調理にも通じますが、内部に熱が入りつつ、表面に良い焦げの付いた状態が理想形です。

遠赤外線と言えば、炭火をイメージする方も多いでしょう。 昔ながらの七輪という道具を使って、炭火で焼くスタイルは今でも残っています。 なぜ、生き残っているのか。 先人の知恵と経験が集積された炭火には、他の熱源では真似のできない魅力がありそうです。 熱の伝わり方の放射を思い出して下さい。 理想的な放射をする物質を、科学の世界では「黒体」と定義していますが、炭はそれに近い物質なのです。 しかも、放射エネルギーは温度の4乗に比例しますので、高温になるほど強く放射します。 炭は燃えている状態で700度前後になります。 黒体に近い物質が高温になれば、赤外線を強く放射するのです。

前回整理したように、オーブントースターも赤外線からの放射によって良い焦げ目が付きました。 その点では、炭火も良い焦げ目を付けれることになります。 さらに、炭火を使った七輪であれば、オーブントースターとは違い開放空間であり、嫌な臭いや煙を逃すこともできるでしょう。 しかし、火を起こすまでに時間がかかる。お手入れも楽ではない。 安全上の問題もあり、換気に気をつける必要もある。 ガスのようには、気軽に使えません。 それでも、上手に使えば、特に焼き物に関しては、美味しく調理できそうです。 加えて、炭火で焼くと、好ましくない香りが少なくて、香ばしい香りが多く生まれるとも言われています。 なお、炭火から放射される赤外線は、遠赤外線と近赤外線は、ほぼ半分づつの割合となります。 炭火の場合は、遠赤外線と言うよりも赤外線と言った方が、より正確なのかもしれません。

また、炭と同じように、石やセラミックなども遠赤外線を多く放射する物質となります。 ここで、石焼きイモについても考えてみます。 石から放射される赤外線、ないし遠赤外線のゆえに美味しくなるのでしょうか。 他にも要因がありそうです。 石焼きの場合は、石とイモが接触しているので、石からの伝導熱もあるでしょう。 また、石と石の間に空間があるので、水分も適当に蒸発しやすい。 さらに、サツマイモは、電子レンジのところで学んだように、 ゆっくり加熱すると、酵素が働いてデンプンが糖に変わって甘くなる。 幸いにも石という材質は、なかなか温まりませんが、一旦温まると冷めません。 そのため、ゆっくり温めるには適しています。 遠赤外線だけではなく、これらの要因もあり、石焼きイモの美味しさを実現しているようです。

また、古代ローマ時代に生まれた石窯(いしがま)。 今でも、こだわりのパンやピザのお店などで使われています。 真のナポリピザは、石窯で調理しなければならないようです。 石窯は、レンガや石で囲まれています。その中に薪を入れて温めて、その窯内で食材を焼き上げます。 その時、赤外線ないし遠赤外線が放射されています。 やはり、パンやピザは、表面はカリッと焼き上がり、内部は柔らかく仕上がります。 このように遠赤外線は、食材表面に熱を効率よく伝えて、綺麗な焦げ目を付けるのには相応しいと言えそうです。 そこで、セラミック加工のフライパンを考えます。 これらは、ガスの炎自体は高温でも、フライパンの温度は200度前後です。 炭火や石窯などの温度と比べるとかなり温度が低くなります。 その点では、遠赤外線の効果を過度に期待してはならないでしょう。

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