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料理道具専門店 フライパン倶楽部 Since1998 Faith&Responsibility Company

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2014春ホームページリニューアル対談
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当店ホームページがリニューアルいたします。 今回は、わが故郷のデザイナー、フォノンデザインの谷野大輔さんに ホームページのデザインを依頼いたしました。 リニューアルを前にして、谷野さんとフライパン倶楽部代表の高津由久が対談をいたしました。

道具に愛着や興味を持つことは、人間味あふれるごく自然な行動である


 谷野さんデザインの当店看板

高津:
谷野さんには、5年前の実店舗改装時にファサードの看板をデザインいただきました。 この看板は、わが社の顔であり、誇りでもあります。ありがとうございました。 まず、こちらをデザインされた時のことを教えていただけますか。

谷野:
カラーではなく、モノクロで表現しました。色味で商品を具体的に宣伝すると言う 意図では無く、あくまで形状であるとか、フライパンのもつイメージを そのままお伝えしたかったというのがその意図です。フライパンという言葉を聞いて 誰しもが思い浮かべる形状というのが大切で、表現に必要と感じたのは、 色彩情報ではなく、フォルムそのものだったからです。

高津:
フライパンのフォルムには、そのもので十分な魅力があるとも言えるのでしょうか。

谷野:
小さなお子さんに「フライパンの絵を描いて」と問いかければ、皆が必ずあの形 を描きますから、道具としての完成度は文句無く素晴らしいものだと思います。 足すことも引くこともできない造形というのには魅力がありますね。 できればそんなデザインしてみたいと思います。

高津:
谷野さんと話していると、商品をほめてくれることがしばしばあります。 それは私たちが見えていない魅力がすでに見えていて、 それを教えてくれているようにも感じます。 仕事での打ち合わせを通じても、自分および自分の店が何であるのかが見えてくる、 はっきりしてくるものがあるように感じます。

谷野:
私は、単純に道具が好きなのだと思います。 デザイナーの卵時代に読んだ本には、その昔、動物が石ころを手にした瞬間に 「人間」になったと書かれていました。 そして人間は生まれながらに道具をデザインしたとも描かれていました。 肉体的な機能はその他の動物に劣っていると感じますが、 我々は道具を駆使してその不足を補うことができます。 石ころを道具として見いだし、それを振り上げた瞬間に我々人間の歴史が 動き始めたとすれば、道具に愛着や興味を持つと言うことは、人間味あふれる、 ごく自然な行動だと思うのです。 ですから、道具商というのに憧れがあるのかもしれませんね。

良いデザインやコンセプトというのは、依頼主の想いの量である


 谷野さんが建築設計して経営するカフェ「フォノン」

高津:
谷野さんは、こちらの要望をしっかりと聞いて下さるのが印象的です。 ですから、こちらの要望およびコンセプトをしっかりまとめるように心がけています。 加えて、打ち合わせ時に話すことを通じて、さらにまとまっていく感じもいたします。

谷野:
重要なのはデザイナー自身のイメージやコンセプトではなく、 依頼主のお話を伺う中で導き出されるものだと考えています。 自己の表現に陶酔することは私たちデザイナーには必要ではなくて、 言葉にもならないような些細なことを一つ一つ拾い上げる作業が主になると感じます。 また、想い入れの深さは依頼主の皆さんの真剣度の表れであると思うので、 依頼主には希望を可能な限り言語化していただくことを強いてしまいます。 私どもはその想いを可視化する裏方ですので、 デザイナーの名前が先行してしまうようなものは必要無いと感じています。 良いデザインやコンセプトというのは結果として、依頼主の「想いの量」だと考えています。

高津:
お料理でも「素材に聞く」という言い方があります。 自分でああしたいこうしたいではなく、美味しくなる原理は定まっていて、 それを見つけることが料理である。 ならば、料理人にもデザイナーにも本来は、本人たちのオリジナリティーなるものは必要とされない。 食材のオリジナリティー、商品のオリジナリティー あるいは依頼主のオリジナリティーを追求するのがお仕事でしょうか。 その意味では、デザイナーの名前が先行してはなりませんね。 あの看板が出来上がった時に、谷野さんの名前あるいは会社の名前を 看板の下にでも小さく入れて下さいと提案したことがありましたが、 谷野さんは、結局お入れになりませんでしたね。

谷野:
はい、ご辞退しましたね(笑) 全く有り難いお申し出だったのですが、私どもの名前は必要のないものだと思い ましたので。その節は大変失礼いたしました。 個人的に「誰々のデザインだから良い」であるとか「悪い」であるとか、何故か そういうものに違和感を感じてしまいます。 昨今はそうしたデザイナー名先行型の売り方もございますね。 それはユーザーにとって判断基準の一つにはなろうかと思いますが、 私にとっては決め手になりません。「読み人知らずの詩」とでも申しましょう か、そんなのが理想です。

高津:
まさに、それは人としての生き方であるとも思います。 宮沢賢治の「雨にも負けず風に負けず」に歌われる、そんな人を思い浮かべます。 「無私の人」とも表現できるでしょうか。 映画化された小説「永遠のゼロ」の零戦操縦士のように、私たちの先祖たちは、 そんな生き方を選んで来たのだとも思います。 しかし、その人たちは、自分を語りませんので、 周りにいる私たちが、それを意識的に知る努力が必要だと思います。 それが歴史を学ぶと言うことなのでしょう。改めて、デザイナーとは、素晴らしいお仕事ですね。

お料理とは、最初から最後まで他者の介在無く一人でできること


 「フォノン」ではイッタラ社アラビアのカップを採用

高津:
当店の一つのコンセプトである「お料理上手は幸せ上手」に関して 個人的に何か感じることをお知らせいただけますか。 谷野さんはカフェを経営してお料理をご自分でも作られますね。

谷野:
デザインをしておりますと、1枚の絵を描き上げるのとは異なりまして、様々な 人の手によって最終形態へ至ります。ですから常に第三者に対して 「情報を伝達する作業」が主になるのですが、そんな中で私にとっては唯一、 お料理に関してのみ、最初から最後まで他者の介在無く「一人でできる」のがとても クリエイティブであると感じます。子供の頃は自分の為に絵を描きましたが、 今は自分の為に作って自分が食べるということが、絵を描く行為に近く、 心が落ち着くのだと思っています。

高津:
より本質的なところでは、すべてを自己責任で行えるとも言い換えることができるでしょうか。 そこに今を生きていることの手応えや実感もある。 だから、落ち着くとも言える。 クリエイトとは、何か新しいものを作り出す行為と言うよりも、 自分で行うという主体性により重きがおかれた言葉のようにも感じます。 谷野さんの落ち着く理由もそんなところにもあるのでしょうか。

谷野:
はい、突き詰めると、生命を維持するために自ら加工して口にするのですから、 とてもプリミティブな行為ですよね。 高度な文明を享受する現代人でありながら、結局そうした根源的な行為というの を捨て去る事はできませんし、これからも捨てられません。 ですから料理は私にとって肉体回帰の瞬間だとも思います。 大げさですけど・・・。

高津:
決しておおげさではなく、肉体だけではなく、精神回帰の瞬間でもあるように思います。 思考を働かせ、五感をフル動員して、決断を迫る。 いわば知情意のすべてを巻き込む営みは、他にはないと思います。 まさしく人間が人間になる営みとも言えそうです。 そこには、人間が人間である、自分が自分であるゆえの落ち着きを 感じることができるのかもしれません。

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お料理上手は幸せ上手
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