ガラ紡の老夫婦
わが故郷には、女工さんたちと寝食を共にして、 和気あいあいと製糸工場を経営していた小渕志ち(おぶちしち)という女性がいました。 わが国の物作りの伝統は、この製糸から始まったとも言えます。 蚕の繭から糸を取り出すために、ガラ紡(ぼう)という機械が開発されます。 今日もこの機械を使っている会社がわが故郷にあります。 その会社の創業者である老夫妻に、小渕さんのことを教えていただきました。 老夫妻は八十を越えた今日も、小学生たちに手で編む物づくりを指導しています。 それは、手先を動かして物を作る喜びを伝えているのです。 このようなご当人たちの生き様にも感銘を受けます。 さらに、奥様からご自身のたどって来た道を伺いました。 忙しく働いている当時、背負っていたお子さんを事故で亡くされる。 それでも、悲しみに暮れず今日まで生きて来られました。 三度の流産を経て、さらに盲目の子供を授った小渕さんも、あくまで前を向いて生き抜きました。 いつしか、小渕さんと奥様が私の中で重なってしまいました。
2012/01/14





