食道楽の幸福
わが故郷出身の村井弦斎の小説「食道楽」では、幸福を右のように提示していました。 「八畳敷の座敷を我が居室と定めてその中に悠々自適するの覚悟があればその人は 自ら幸福を感じ得られますが八畳では狭い十畳にしたい、十畳では狭い十二畳にしたいと 何処までも欲望を進めていったら千畳敷の座敷へ入っても満足の心は起こりません。 幸福とは何であるといえば自ら満足するという事です。 満足は何であるかといえば覚悟の範囲を充たすという事です。 良人(おっと)は妻に満足し、妻は良人に満足するのが幸福です。」 人間の欲とは、「ここまで」と範囲を定めた覚悟がなければ、どこまで行っても満たされない。 かたや、覚悟の土台にある人間の意思とは、そこに信じることも働けば、その通りとなる。 覚悟とは、自分の分あるいは人間の分を知ることであり、それを素直に受け入れる意思でもあります。 本来自分が受けるには相応しくないのに、一方的に頂いたことへの感謝が溢れてくる。 その覚悟にこそ、自らを律する本来の自由が潜みます。 その覚悟や自由は、台所および食卓で育まれます。
2020/10/08





