手仕事の価値
同い年の若松英輔さんが、生前の石牟礼道子さんに尋ねました。「水俣病事件の本質を考え続けるためにどんなことをしたらいいでしょう。」1分ほどの沈黙の後で「手仕事ですね。」この言葉が私の中で大きく響きました。それに対して若松さんは「手を使わなくなったということが私たちにとって、とても大きな過ちなんだ。その手仕事を取り返すという本当に些細な日常のことが、私たちの世界を小さくだけど、確かに変えていくということが、石牟礼さんがたどり着いた結論なんだと腑に落ちました。」私たちの世代は、ある意味では経済成長の恩恵を受けてきましたが、それをそのまま続けていくことではなく、ここで主体的に変えていくタイミングだとも感じます。問いを変えれば、さまざまな現代的な問題あるいは戦争などを他人事で終わらせず、どうしたら自分事としてとらえていけるのか。それは、街づくりの現場でも痛切に感じることです。そして、それは、まず足元を見ること。お料理という暮らしの小さな営みからはじまる。それは、やがて世界を変えることにも通じる。フライパンを握るDJスタイルの取り組みに「それでよし!」と若松さんを通じて石牟礼さんからエールを頂いたようでした。
2026/10/15





