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朝のスタッフ会議

2017年10月21日

自由の扉を開く料理

著者の稲垣えみ子さんは、元朝日新聞の記者で、アフロ頭の写真入りで 論説などを書いていたことを記憶しています。 その稲垣さんが、新聞社を退社されて、「夫なし、子なし、冷蔵庫なし。 仕事したりしなかったりの、フリーランスの日々を送る。」 その新たな生活を通じて、幸せと言いますか自由を見出して、 「人生を救う最強の食卓」のサブタイルのもとに、この著書を上梓いたしました。 「私に自由をもたらしたのは、お金でもなく、資産でもなく、特別な才能でもない。『料理』だったんです。」 個人的には、福沢諭吉の「学問のすすめ」を彷彿させる自立・独立のすすめであり、大変爽快でした。


もうレシピ本はいらない(稲垣えみ子著・マガジンハウス) アフロ頭のご自身が、「自由の女神」となってヘラを振り上げ、 レシピ本を捨てて微笑んでいます。まさに、自由こそ、この書のテーマです。

福沢のように、一般大衆にも分かりやすい言葉で、当世風に綴られているので、 読みやすく、あっという間に読めてしまいます。さすが、朝日で書いていた記者。 ですから、自立・独立という重い内容を、「私にもできるかも」という期待感を抱かせしまう魅力があります。 それは、自分の過去や経験をさらけ出して、あくまでも読者と同じ目線で書き進めているからでしょう。 かたや、「1食200円」を歌いながら、ご自身の料理を16ページに渡り掲載していますが、 本来の家庭料理の薫りが漂って参ります。 プロが作るいわゆる洗練された料理よりも愛情なるものを感じました。 それは、きっとお母様から受け継がれているのだと想像しました。

情報が氾濫する時代となり、いつしか日常の家庭料理まで、お祭りの時にいただくような ご馳走にしなければならないと考えていることを危惧されていました。 ハレとケの違いで峻別すると良いのですが、毎日の料理は「飯、汁、漬物で良い」 これは、前回ご紹介した「一汁一菜でよい」という 提案にもつながります。本来は、この構えをもつべきなのだと思います。 家庭のお母さん方も、ほっとできると言いますか、救われる気持ちになれることでしょう。 ですから、ご飯を炊くことから始まって、味噌汁をつくること、 ぬか漬けと旬の野菜の調理の方法が、いかに簡単であるかを解説。 「だから、レッツ料理」と優しく後押ししてくれます。


ご自身の作った料理を写真入りで紹介されていますが、文章だけでなくお料理のセンスも光っています。 お料理の本質である自由な思考から生まれてくるのでしょう。

タイトルの「もうレシピ本はいらない」とは自由の宣言でもあるように感じました。 考えてみれば、レシピとは、コピーアンドペーストであり、他人からの借り物。 ある意味では模倣であり、人真似です。そこに自分はありません。 著者も「依存であり、思考停止だった。」 自分で味見をするようになって、はじめて自分で考えるようになった。 極めて当たり前のことですが、真理が潜みます。 そこで、使う調味料を「塩・醤油・味噌」だけに絞ったところ、何を加え減らせば良いかが見えてきた。 これまでは、複雑な味付けをしすぎて、素材の美味しさをわざわざ殺していたと反省。 そして、野菜をはじめ食材そのものの美味しさに目覚めて行きます。

「激安御三家大公開」ということで、夏の御三家が、キューリ・ピーマン・ナス。 冬の御三家が、大根・ネギ・白菜。 確かにこれらは、安価で手軽に購入できるものばかりです。 そして、これをシンプルに焼く、炒めるだけで十分美味しいと。その通りだと頷けます。 野菜は旬のタイミングであれば、安いばかりか、簡単に調理ができて、しかも美味しい。 確かに、その意味では、お料理は決して難しいものではなく、簡単なものだと納得できてしまいます。 しかも、高額なものではなかった。 問題なのは、難しく考えてしまうことにありそうです。それは、もったいないことです。

エピローグでは、お料理することの意義をまとめています。 「料理なんて簡単だ。でも、簡単だけどやればやるほどその奥深さが見えてくる。 食材のありがたさ、季節の恵みにも心が向く。それをきちんと美味しく調理することの 難しさもわかってくる。それがわかると、誰かが料理を作ってくれるということの ありがたさもわかる。そうなれば人が助け合いながら生きていくということの素晴らしさも見えてくる。 そこまでわかった時に初めて、生きていることの素晴らしさが見えてくる。 そして、人を助けようという気持ちも自然に湧いてくる。それを『自由』と言うんじゃないだろうか。」 この書は、やはり自由論でした。

稲垣さんは、アフロ頭が象徴するように、発想や考え方が自由だと感じました。 いや、ある状況に追い込まれて、他に依存せず素直に自分で考えることができた。 自分を信じることができた。そこに、大切なことを見つけていったとも言えるでしょう。 その背後には、著書でもふれていた老いていくお母様を思いやる裏側で、 やはりお母親の愛情をたっぷり受けていたことが分かります。 すると、あの自由な生き方を貫ける強さは、お母様の料理にあったと思えて参ります。 その愛こそ、人を自由にするのでしょう。