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代表者のエッセイ

2015年10月30日

kaicoの会 高知の巻 旅日記

フォームレディさんが主催するkaicoの会に参加するために高知県に行って参りました。 この会は、kaicoシリーズに関わるメーカー、デザイナー、問屋、販売店が一堂に会して親睦を深めます。 毎年開催されて今回で8回目となり、私は初めての参加でした。 愛知県からですと、新幹線で岡山まで出て、そこから特急南風(なんぷう)に乗り換えて片道6時間の道のり。 途中で名古屋のインテリアショップのIさんと待ち合わせて、現地に向かいました。 Iさんとは初対面でしたが、kaicoの会を毎年楽しみにされている常連メンバーでした。 小売業に身を置くもの同士、電車の中で話が弾みます。 その中で、Iさんのお店も参加している「愛知インテリアショップコミュニティ」を伺いました。 いただいたパンフレットには、 「『同業者なのに、なぜ仲がいいの?』確かに、ある意味ライバル店です。 しかし、同じ目的で頑張っている店であれば情報交換したり、勉強しあうことによって お互いがもっと素晴らしい店になり、お客様に対してより魅力的で価値のあるサービスを する事が出来ます。」小売業の明るい未来を感じることができました。 そんなIさんは新婚さんでもあり、来年にはお父さんとなります。きっと仕事も生活も楽しむ優しいお父さんになることでしょう。


宿泊先の旅館前から昇る朝日に、明日のわが業界を思いました。

高知駅に到着して、Iさんとタクシーでひろめ市場に向かいます。 すでに、飛行機で到着の皆さんは、竹材加工のコスモ工房さんの 見学を終えて、そこでお昼をとっていました。私たちは途中からの参加でした。 ひろめ市場は、屋内に屋台が集積していて、高知の郷土料理が楽しめる飲食店や鮮魚店などが集まる商業施設でした。 すると、そこに知り合いの故郷豊橋の市会議員たちとばったり出会います。 「え、どうして、ここにいるの?」 議会の視察に来ているとのことで、ちょうど同じ日の同じ時間、同じ場所での鉢合わせにお互いにびっくりでした。 市会議員の皆さんも明日の街を見据えていましたが、私も改めて、 より大きな視点で物事を見つめるように促されているようでした。 そこには、昔の商店街にあった人情と言いますか、人と人とがつながる良い空気が流れていました。 高知には献杯・返杯という文化があるとのことで、目下の者が目上の者に杯を渡して、お酒を酌みます。これが献杯。 目上の者がそれを飲み干すと、その同じ杯を目下の者に返して、そこにお酒を酌み返す。 これが返杯。そして、飲み干した杯を再び目上の者に渡す。これが延々と続くのだそうです。 その背後には、人と人とのつながりの強さを感じました。

ひろめ市場でお昼をとった後に、バスで戸田商行さんの 木毛(もくめん)工場を訪問。 今回の参加者は40名を超えていて、これまでで一番多い参加者となります。 バスの車窓から眺めた高知の印象は、森林が多いこと。 今回訪問するところは、どこも木製品の工場。 県土の84%を林野が占める全国一の森林県とのこと。 やはり、産業とは、その風土によって生まれるのものだと思いました。 さて、木毛とは、「アカ松や杉、ヒノキを龍のヒゲ状に削り、約80℃で乾燥したもの」で 果物を箱詰めする時などの緩衝材として使用されています。 緩衝材だけではなく、枕になったり、脱臭剤になったりと、さまざまな可能性を秘めています。 この旅を通じても、アイデアを募集されていました。 工場に入ると、湿った丸太が何本も山積みとなっていました。 それは、アカ松から青い色合いを抜くために、しばらくそのまま晒しているとのこと。 木毛の綺麗な色合いを出すために、見えないところでのご苦労があるのだと思いました。 そこでは、身障者の方を積極的に雇用されていて、黙々と働いている姿が印象的でした。 若き女性経営者が同行して説明下さいましたが、後日ホームページを拝見して、 先代のお父様の思いをしっかり継承されていたのだと清々しく思いました。

その後、当社でも商品を販売させていただいている 土佐龍さんの工場を訪れます。 そこでは、工場とともに直売場もあり、さながら観光地のお土産屋さんの様相でした。 その工場では、ご年配の方に交じって、若者が働いているのが印象的でした。 職人不足が叫ばれる中で、若者がモノ作りに励む光景には、やはり明日を感じることができます。 その彼が、耳栓をしながら機械と向き合っていました。 普通ではない作業環境の中で、まな板が生まれて来るのだと改めて思いました。 白髪の創業社長が直々に紹介してくれましたが、使用している工作機械の中には、 ご自分で製造したものもあり、故郷豊橋の製糸工場の座繰り器と重なりました。 それらの機械は、知恵や工夫の結晶とも言えるでしょう。 その結果、使いやすい商品が生まれてくる。 反り止めのまな板の場合、木をよく選定して貼り合わせて、反り止めのための溝をカットして、 そこに反り止めを入れる。その時、溝の先端に隙間がないように仕上げていく。 この細かいところに職人魂が込められます。 そして、機械で丁寧に磨いて仕上げる。この磨きの工程をへることで、吸水しにくくなるとのこと。 一つの商品ができるまでに、さまざま工夫と細かい配慮のあることが分かります。

太平洋を見渡せる旅館に到着すると、ドリップコーヒーの研修会が開催されました。 今回は、日本スペシャルティコーヒー協会が主催する ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ2015で優勝した 高橋由佳さんが実演下さいました。高橋さんは、今回の参加者の中では、最年少だったかもしれません。 その彼女が強調していたのが、「kaicoドリップケトルを使って下さい。」 また、ドリップした時にコーヒー粉が膨らむことをポイントに挙げていました。 それは、コーヒー粉全体を使い切り、一粒一粒から美味しさを抽出するため。 そのためには、新鮮なコーヒー豆を使うこととあわせて、 滴を細口で自在にコントロールできるケトルを使うことだと言われていました。 高橋さんが勤める自家焙煎珈琲専門店のオーナーの楡井有子さんも同席されて語っていました。 「美味しい珈琲とは、生産者からカップ1杯になるまで何ひとつ手を抜くことなく作られた 珈琲が美味しい珈琲になります。」 私はこの言葉を聞いて、ドリップケトルも同じく 「何ひとつ手を抜くことなく作られた」ものではないかと直感的に思いました。 すると、デザイナーの小泉誠さんと、メーカーの昌栄工業の社長さんが登場して kaicoドリップケトルの製造秘話なるものを語って下さいました。

研修会の後に、宿泊する部屋に入りましたが、今回私と同室は、業界では双璧となる 大手百貨店問屋の部長たちに、加えて某大手通販会社の部長でした。 こんな場でもなければ、お互いに話す機会もないのかもしれません。 そして、いざ腰を据えて話してみると、同じ問題を抱えていたように感じました。 それは、いかに若手を育てるか。 皆さん、この会に若手を同行させていましたが、部下への思いが伝わって来ました。 私としても、小売店の立場ではありますが、問屋の若手を一緒になって育てて行くことが、 仕事の一つでもあると思いました。 また、以前は男性ばかりの業界でしたが、最近は女性も増えて参りました。 お料理道具を扱うのですから、当然のあり方とも言えます。 フォームレディの社員の皆さんも参加されていましたが、名前のごとく女性ばかりでした。 これらの女性の皆さんが、業界で働くことを通じて、お料理や家事を身に付けて、やがて家庭でも輝く女性となる。 いわゆる花嫁修業とも言える、そんな役割が、わが業界にはあるのだと思いました。 一堂に会すると、そんな業界の明日も見えてくるように感じました。 家庭用品を扱う業界は、女性の幸せを求めて行くことが目標と言えるのかもしれません。

夜は、楽しい宴会となりましたが、私の向かい席は、高知県産業振興センターの職員のUさんでした。 そこで、「HYBRID-Kochi」(ハイブリッドこうち)の取り組みを伺いました。 今回訪問したメーカーさんたちがお互いに仲睦まじいと感じていたのですが、 この取り組みで結ばれていました。 高知の素材と人をつなぐことをテーマに、統一ブランドを立ち上げて、セレクトギフトとして提案していく。 今回、お土産として全員に「HYBRID-Kochi」の商品をいただきました。 その袋には、丸印の中に「そ」という平仮名が書かれていて、それは素材の「そ」ということでした。 土佐龍さんの商品開発コンセプトも「素材を生かすこと」 ホームページでは「板としてのシンプルな存在感をまず生かすことから発想します」 その考え方を共有できるメーカー同士が協力し合う。 お互いに協力して行くことは、今回の会のテーマであったのかもしれません。 ご挨拶の席で思い浮かんだのが、この会の名前でもある、地元豊橋の製糸の元であった蚕(かいこ)。 その蚕から糸が取り出されて、縦糸と横糸が出会うことで布となり、人の傷を覆ったり、温めたりする。 中島みゆきが歌った「糸」を引き合いに、この会の魅力を語らせていただきました。

その場で、小泉さんの本「地味のあるデザイン」が紹介されていて、小泉さんとお会いした時に 「地味に商売している者です。」と自己紹介をさせていただきました。 地味とは、私が共感できる言葉で、これからの時代のキーワードだと思います。 本の中でも「スタンス」という項目で「じっくり しっかり ゆっくり」と表現されていました。 小泉さんには、哲学と言いますか、デザインのベースになる深い思索があると感じられました。 地に足の付いたと表現できるでしょうか。 それは、作り手および使い手を尊重されるスタンスかもしれません。 あるいは単純に、人を大切にすること。 今回のKaicoの会がそれを象徴しているように、だからこそ小泉さんのもとに人が集まるのでしょう。 それこそ、小泉さん自身が、地味な方だと表現もできるかもしれません。 サインをお願いすると、小さな字で、控え目に書かれました。 私が、目立つところにお願いすると、「恥ずかしいですから。」 小泉さんにとって、あくまで主役は作品であり、ご自身は黒子に徹しているかのようです。 かたや、この本を一冊つくるにも時間をかけたそうですが、腑に落ちるまで時間をかけて物を作っていく。 自分の分を弁(わきま)えておられるのだと思いました。

翌日は、三昭紙業さんの工場に伺います。 楮(こうぞ)という和紙になる植物を育てるプラントを見学。 その植物の樹皮を剥がして紙にする工程をご紹介いただきました。 「これが、ここで作られていたのだ。」 ウェットティッシュなどOEMとして身近なところで三昭紙業さんの商品にお世話になっていたことにも気づきました。 さまざまなものに和紙が応用されていて、最近では美容のために、顔に付けるマスクがあり、お肌がツルツルになるとのことでした。 展示品のコーナーで小泉さんと一緒になって 「このウェットティッシュが樹脂箱ではなく、それなりの箱に入っているとインテリアに良いですね。」 私の中では、ブナコのティッシュケースのようなものを 想像して問いかけます。 すると、小泉さんは少年のような眼差しで「それ、いいかもね。」と深く頷いておられました。 そのような感じで、生活者あるいは売り場目線で、常に商品化のことを考えているのが、自分たちなのだと思いました。 メーカーは、そこの部分にも大いに期待してくれているのだなあと、今回肌で感じました。 人と人とが結ばれて、新しい商品が生まれる。 モノ作りに込められた心を尊重しながら、生活者の視点で見つめるところに、末永く愛される商品は生まれるのでしょう。


龍馬の眺めた同じ海で、この時代も同じことが起きると予感いたします。

最後に、桂浜の海岸に出かけました。晴れわたる秋空のもと、皆さんと記念撮影をしました。 すぐそばでは、銅像の坂本龍馬が太平洋を見つめていました。 この龍馬を介して、薩摩と長州が手を結ぶことで新しい時代が切り開かれた。 それは、力を合わせればできる。 このkaicoの会の成り立ちが小泉さんの本に書かれていました。 kaicoシリーズを作っていた琺瑯メーカーが倒産してしまった時に、kaicoは生産終了の危機に立たされます。 その時に、下地の鉄器を作って来た昌栄(しょうえい)工業さんの会長が救済のために尽力します。 いち早く情報をつかんで、差し押さえ寸前で琺瑯を掛ける前の金型を救い出します。 そして、他の琺瑯メーカーを探して交渉に当たります。 そこに、問屋のフォームレディの竹原さんも加勢。 生産が再開されるまで、一切安売りをせずに、じっと待ちます。 その結果、kaicoは復活を果たします。その復活を祝った会が、kaicoの会のはじまりだったと。 デザイナーの小泉さん、メーカーの昌栄工業さん、問屋のフォームレディさんの絆がこの時に作られたのだと思いました。 その力合わせの輪が、kaicoの会を通じて周りに広がっています。 そこに明るい未来は待っている。そんな希望を胸に、高知を後にしました。